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認知症事故訴訟、最高裁にてJR東海の請求を退ける

認知症の介護をなさっている方々には興味深いニュースがありまして、マスコミで「認知症事故訴訟」として報道されていた判決が最高裁判所第3小法廷ででました。

この訴訟は、「認知症の男性が線路に入って列車にはねられて死亡し、その男性の家族に対してJR東海が列車に遅れや代替輸送が必要になった損害賠償を請求」というものでした。

最高裁判所の判決は、

JR東海の2審判決を破棄して、JR東海の請求を退ける

というものでした。

この裁判の内容

認知症の男性が列車にはねられた事故が発生して列車遅延等が発生したので、その損害を男性に請求することに。

しかし、男性は認知症なので責任能力がないとみなし、代わりにその認知症の男性の家族である妻と子が「監督義務者」として損害賠償の責任を負うということで家族に719万7740円の損害を請求。

  • 第1審は、男性の妻と子に全額719万7740万円の支払い
  • 第2審は、男性の妻に359万8870円(請求額の半分)の支払い

と出ていました。

双方とも不服ということで、最高裁判所までもつれ込み、

家族側は「認知症介護は家族の犠牲と負担で成り立っているので、家族に必ず監督責任を負わせれば、負担は一層過酷になるので棄却を求める」とし、JR側は「家族には監督者として責任がある」と主張しました。

どのような判決が最高裁判所で出たとしても、介護現場に大きく影響が出る裁判になっていました。

ただ、JR東海が血も涙もない行動というわけでもなく、「事故によって遅延があって損害が出たので、裁判所に判断してもらう」という感じになっています。JR東海としては、こういうケースでの処理方法が決まっていなかったので(金額を請求できるか、責任の所在など)、それを含めて裁判を起こしたところもありそうです。

介護現場の苛酷さ

今回の事故で損害賠償が発生した場合、介護現場にいらっしゃる方々はかなりのショックを受けた可能性があります。

「要介護4の男性」のことを、「要介護1の妻」が目を離した隙に男性が線路に入って事故を起こしたので、「妻が目を離したので妻が悪い」、というのが第1審、第2審の判決でした。

目を離したのが悪い、と言われると介護している人はその時点で何も出来ない状態になります。

それをどうにかするには、柱などに括りつけて動けなくしたり、部屋などに入れて出さないようにするなど、人権団体がうるさそうなことをするしかなくなってきます。何人かでやればいいといっても、2人ですと単純計算で12時間目を離せず、4人でもそれぞれ6時間も目を離すことができません。

認知症の方は、考える力などが落ちていても体力は結構残っていたりします。ですので、目を離した隙に、ということは防ぎきれないのですね。

施設に入れるといっても、それだけのお金が今の時代そうそう持っている人はいません。介護される人が既にお金使いきってしまった場合もあります。国が助けろとかどうのといっても、国にも要介護者を介護できるほどのお金はありません。

そして、介護施設の現場で働いている方は、過酷な労働をしていても介護報酬が削られて生活がなんとかできるかどうか、という人も出ています。施設入居者に対するスタッフの人数も少なく、入居者とスタッフともども大変な状態になっているところもあるようです。

その中で、今回のような状況でも損害賠償が発生したのであれば、要介護者に関われないということで、その人からはみんな離れますので先がなくなってしまいます。

高齢化社会になって平均年齢が上がって増えてきている日本ですので、介護現場から見たら「最悪な判決」にならなかったことでひとまず心配だった種がひとつ消えたという記念日にも値する日になりました。

最後に

実際、JR東海も損害は出て、乗客も大変になったことは事実です。

ですので、JR東海がどうのというよりも、社会全体で高齢化社会のことを考えて、自分が要介護にならないように色々なことをやるなど、それぞれの努力もある程度は必要になると思っています。

自分自身がまずできること。それをどうするかで、また社会全体が良い方向に変わっていければ良いなと思います。○

  • この記事を書いた人

タコわさび

介護を見据えて平屋を建てて、自宅で働くように。後悔なく生きるために、様々なことを模索しています。 簡単なプロフィール プライバシーポリシー

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